思考の遊園地回廊 #10

命ばっかり / 6年後に好きな人と仕事するわたし

274日目:離人カーテンの囚人

ゼロと無限について数日間考えるうちに、どうやら私も思索のカーテンの囚人となってしまったらしい。この土日は異様に長く感じ、何も手につかずにただただ惰眠を貪っていた。暑くなると体調を崩すのだ。今後はコロナのリスクを承知で多少図書館やカフェなどに避難したほうがいいかもしれない。
草間彌生の小説『クリストファー男娼窟』を読んだ。先日のゼロ展の際彼女が小説を書いていたことも知り、安かったのでAmazonで購入した次第である。インターネット検索すると「クリストファー男娼窟 読み方」と3番目には出てくることに失笑してしまったが、確かに赤裸々で濃厚な性描写、現実と虚構が入り混じる世界観など、決して口当たりが良く読みやすい小説ではなかった。しかしそれらは直接的に批判めいていて、草間作品の読み解き方をまた変えてくれるテクストであるように感じた。
表題作「クリストファー男娼窟」は差別と性的暴行、売春と過激なテーマを生々しく扱っているが、途中からSFめいた描写が際立ち、こちらを混乱の最中へと誘惑する。3作通して草間の小説には救いがない。圧倒的に最悪な現実と、その中に蜘蛛の糸のように垂らされる幻覚。しかしそれこそが、草間の幻視からうまれた芸術のともしびなのかもしれない。
群衆の中に昨夜、彼岸からやって来てキーコに宇宙の果ての線路の彼方について語って聞かせた、幻の老婆が杖をついて彷徨っていた。
彼女はキーコの死体に向ってささやいた。
「あなたの悲しみは今日で終り」
離人カーテンの囚人」の最後のセリフで、個人的感傷があふれて泣いてしまった。
 
お昼を食べながら、範宙遊泳『バナナの花 #1』を観た。期待値が高くて思っていたほどは面白くなかったけど、そういうのは最後まで見てから語ろうと思う。あと範宙遊泳は過去の公演動画を一杯上げてるので、今のうちに全部見ておきたい(特に友達が絶賛していた『もうはなしたくない』とか)。

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そういえばロロ『窓辺』の3話ももうすぐ更新だろうか*1。先日の2話は良かったなあ。本当に良かった。やっぱり私は常に死を考えて生きてるせいか、物語に死を絡められることに物凄く弱い。弱いし、すぐ泣いてしまうし、愛着を感じる。
本当に自殺をしないように、物語の中で何度も死にたいんだと思う。おかしいよね。
 

もう長いこと生で演劇も演奏も見てはいないけれど、そのせいか皆と過ごした日々とか、出来事とかが全部夢のように感じる。本当に嘘みたいで、ちょっとだけ昔のことを思い出した。ずっと好きだった幼馴染が、ペアにしたストラップをなくしてしまったこと。バレンタインのお返しはそういえば手作りのクッキーだったな。私がはっきりせずにいるうちに、劇団の女の子と付き合ってた。告白する前に振るなんて、ひどいやつだ。今でもその日のことは、とてもよく覚えている。思えば声が出なくなったのは、あれが初めてだった。
友人と同じ位置にほくろができかけていた。嫌だ、同じになってしまう。私はペアとか、双子という言葉がすごく好きだ。でも私がそうやってかけてきた呪いは、呆気なく放棄されることが常だった。
 
お揃いは、いつか終わる日が来るから、嫌なのだ。
週末に見た展示が脳裏をよぎる。大好きな画家に会った。沢山沢山絵を観た。喫茶店でクリームソーダを飲んだ。サイゼリヤで豪遊した。お気に入りの白い服に汚れを付けてしまったけど、洗ったら落ちた。

*1:公式noteには次回更新は6月上旬と書いてあった。